秋山画廊にて

久しぶりの東京になる。
無事に搬入が終了して、少し一服した。

2度目とはいえ、ギャラリー23℃は改装して、まったく新しくギャラリーらしい空間になっていた。作品の物量はそれほどではないが、吊り作品のため、ベストな位置を模索したり調整したりするのは、案外手間がかかった。結局、搬入には丸一日半かかって、オープン。新型コロナ禍の中の東京では、むしろ緊張感を通奏低音のように感じながらのため、開放感を楽しむような雰囲気にはならないが、そんな中、旧知の方々が見に来ていただけたのは、有難い限りだ。

今回の展示は、まったく新しくしたシリーズを発表する。クールな作品ではなく、私の根底にある情念を対象にしたものに切り替えていく、その始まりの個展になる。秋山さんには、今まで6回も個展をさせてもらい、そのほとんどが半企画扱いにしてもらうなど、たくさんの恩を受けてきた。秋山さんが私の背中を押してくれた、というか叱咤されたような気がした。「何ぐずぐずしてるの。」と。

搬入が無事終了した次の日に、秋山画廊を訪ねてみた。突然にも拘らず、お姉さまが丁寧に対応して下さった。「秋山画廊は休廊です。私もこの頃になって、やっと気持ちが上向きになってきました。」という第一声には、力強い意思が感じられた。これまでのご苦労も話して下さった。一人倒れて、圧迫骨折をしたこと。一年半リハビリをして、少しづつ歩けるようになったこと。裏の雨水がギャラリーを浸して、掃除や防水工事をしたこと。「妹は、全てを現代美術に捧げて生き切ったのだと、本当に充実した人生だったのだろうと、この頃やっと納得出来るようになりました。」と話しながらも、目からは涙がこぼれる。「色々手伝ってくれた作家の近作を見て、作家の精神的成長を感じました。」と話す姿は、妹、田津子さんとダブって見えた。

木は切られても、切り口の傍から、蘖(ひこばえ)が噴き出す。