歳森 勲 個展 「還元」 Isao Toshimori Exhibition “Reduction”

SPACE 23℃
158-0091 東京都世田谷区中町2-17-23  2-17-23 Nakamachi, Setagaya-ku, Tokyo
2023.10.13 (Friday) – 11.5 (Sunday)

還元









全9点 300㎜×300㎜×43㎜ ガラス、顔料、その他

●還元とは、平面になるまで平均化すること。
「生成する」⇔「還元する」ことを、「塗り重ねる」⇔「磨き出す」行為に重ねました。
●アンビバレント=両極なものが同居する状態を指向しました。
●作品側面は、壁面と同化するように何も施さず、皮膜を強調しました。
●美しくとも肌を傷つけるガラスを素材に、作品制作を続けています。ガラスは、防御の比喩であったり、融和と拒絶を繰り返す剝き身の生を表すと思っています。今回、ガラス片を様々な青と共に塗り重ね、平面になるまで研ぎ出しました。複雑に重なり混ぜ合わされた層から、予想を超えた青や奥行きが生まれました。

還元 部分

木馬


                              Photograph by Shiki Kurahashi

〇木馬は、「還元」作品に物語性を付け加える装置です。揺れながら、行ったり来たりする運動体として、成形(生)⇔還元(死)の比喩になることを試みました。
〇子供だけではなく、大人が乗ることが出来ます。
小豆島・梅の小屋で生まれ、東京・榎倉家まで旅をしてきました。
〇私の娘が所有します。

この作品を作りながら

●生⇔死という両極を強く感じさせたのは、やはり昨今の状況があったと思います。
人も元に還っていく。亡くなる人に対する喪失の悲しみを、そうやって紛らわせることも多かったのですが、生と死が循環する、生まれる前にいたところに死んだ後に還るとしたら、元とは何か?
考えの及ばないことを考えるきっかけとして、この作品はありました。

●二律同時存在は、リアルであること。それぞれが全く別のもののように存在していても、その二つが強く結びつき関係を持っていることを強く感じました。私の中で、このことが再登場したのは、ラピスラズリの原石を取り寄せ、凸凹を平面に磨き出したことがきっかけです。

●自己存在と物質存在の、常にあるせめぎあいは「もの派」の核になっていました。磨き出していく過程で、一瞬でも削りすぎると、ぼろぼろに表面が崩れていくことがありました。ここには、絵の具の固着力と、磨き出す力の均衡が、手の先で常に起こり続け、ものと身体との関係を常に意識させました。固めながら削り出すという、合理性を欠く行為に没頭した理由は、ここにあったと思います。

●「もの派」が物質と身体の関係性をテーマとし、その後登場した※「関係性の美学」により、次第に社会と作品との関係性を問うアートに塗り替えられていった時代を、私は生きてきました。しかし近年、アートがその肉体をますます失い、やせ細っていくように思えるのです。このことについては、また文章としてまとめようと思っています。
※「関係性の美学」ニコラ・ブリオー 1990年

●榎倉康二氏は、白と黒が、そのようにシンプルに対立する様を見事に表現していました。黒は、想像力の初源としての闇であったかのように思います。このシンプルで強靭な作品構成は、追随を許さないものとして、長く私の前に立ちはだかってきました。今やっと私は、様々な色や繰り返し塗り磨いた上で出てきた「雑多さ」に、意味を見出すことが出来そうに思います。